いつかの映画少年 極私的映画感  vol.11『大怪獣空中決戦』

路地裏の映画少年
ガメラ 大怪獣空中決戦 金子修介、樋口真嗣(1995)

 なぜ、ここで怪獣映画が、という疑問もあるが、このシリーズでは個人的に記憶に残った、思い出深い映画を挙げているので、何の問題もないはず。

 昭和の時代、日本の特撮が世界を震撼させたのは、もちろんゴジラ=円谷英二だった。ゴジラシリーズは手を替え品を替え、脈々と映画化されたが、ライバルとされていたガメラは、すっかり梨の礫となっていた。理由は簡単で、ゴジラが東宝の配給に対して、ガメラは大映だったから。大映は1971年に倒産した。その前の経営危機をなんとか凌いだのが、「ガメラシリーズ」と「大魔神シリーズ」と「妖怪シリーズ」だった。その中で「ガメラ」は完全に子供向けとして制作されたが、ヒットシリーズとなったのだが、結局は大映のあだ花となってしまった。この大映は後に徳間書店の子会社となり、今は角川書店となっているのだが、徳間書店時に制作されたのが、『平成ガメラ3部作』であり、その第1作が『大怪獣空中決戦』だった。

 この『大怪獣空中決戦』は後の怪獣映画の特撮に大きな影響与えたのだが、当初は制作中止などのトラブルに見舞われた。もちろん予算的なものもあったのだが、旧大映チームにとって、ガメラは子供たちの見方であり、完全な人間側なのに対し、この映画ではただギャオスを倒すための怪獣だったので、バンバン人間が創り出した建物や街を壊すのだから、昭和のガメラを愛する者にとっては、とんでもない話であった。金子修介監督の降板も検討されるほどの賛否両論があったのだが、残念ながら世間では全く認知されていなかった。スティーブン・セガールの娘がガメラと心が通じるという設定が、ガメラが人間の味方という昭和のシリーズの名残りだったのかもしれない。ただあの演技力を見ると、無理やり捻じ込まれたとしか思えない。確かに今更ガメラでもないだろう、というのが正直な意見だし、平成になってもゴジラシリーズは作られており、完全に人間寄りのガメラの登場など誰も待ち望んでいなかった。それでも金子監督の執念が実り、それまでの怪獣映画を一新するほどの作品が出来上がった。とにかく衝撃的で、映画鑑賞時間を忘れるほど、日本の特撮ファン、怪獣ファンを興奮させた。しかし、その後のシリーズなど考えられないほど、興行成績は散々な結果だった。確かに宣伝もなく、子供向けでもないのだから、映画館でお金を払って鑑賞する人は少なかっただろう。それでも映画の評判は高く、怪獣映画では初めてキネマ旬報ベストテンにも選ばれた。その評価が功を奏したのか、続編、そして第3作と作られ、『平成ガメラ3部作』と呼ばれるようになった。

 この第1作は制作予算が当初は5億円だったという。「ガメラ誕生30周年記念作」だったのだが、その予算額を聞いた金子監督は「大映倒産25周年記念映画」としてパロディ映画をつくるのではないかと危惧したらしい。徳間書店なので、映画に大金を掛けるという考えはなかったのだろう。それでもよく作ったものだ、と感心する。徳間書店と言えば、往年のジブリ映画の配給も行っているのだが、ジブリがお金を使えるようになったのは博報堂から電通に代わり、日本テレビが制作に加わるようになってからで、『魔女の宅急便』以降はそこそこ潤沢な製作費が用意された。それ以前のジブリ映画はほとんど人海戦術だったのだろう。徳間書店は名作、それも後世に残るような映画を作っているので、もっとお金をつぎ込めたら、もっと多くの名作が生まれたかも知れない。残念で仕方ない。

 作品は特撮ばかり注目されたため、特技監督の樋口真嗣が目立つことになるのだが、やはり監督の金子修介の怪獣主体の演出が、今までにない斬新なカメラワークや構図が作品を特別なものにしていたのは確かで、後に続く『デスノートシリーズ』や『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』でも如何なく才能を発揮している。もちろん、通常の映画でも実力はあり、最近演出した『ゴールド・ボーイ』は金子修介ここにありという作品だった。また唯一のゴジラ映画も、それ以前のゴジラとは全く異なる視点で描かれており、ヒットした『ゴジラ-1.0』は、同作品をオマージュしているシーンが多く、監督の山崎貴も影響を受けていると語っている。このゴジラ映画は『GMK』と呼ばれているのだが、もちろんゴジラ、モスラ、キングギドラのこと。個人的にはバラゴンが好きなので、ちょっと悲しくなる。怪獣にも順列があり、昭和のゴジラシリーズ(いわゆるVSもので3作目以降)で一番好きな『三大怪獣 地球最大の決戦』の“三大怪獣”は、「ゴジラ、モスラ、ラドン」のことなのに、ポスターには「ゴジラ・モスラ・キングギドラ」となっている。一番好きな怪獣であるラドンの処遇に腹立ったことを思い出した。ポスターのラドンも、まあ小さいこと。2019年のハリウッド映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でラドンが選ばれたことは密かに嬉しかった。それに、この映画のラドンの強いこと。思わず応援してしまった。

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