かつての少年はすべて真実だと信じていた。モンド映画が全盛だった時代
いわゆるモンド映画。つまり、ヤラセの映画である。しかしヤラセと言っても、報道ではないのだから、なにもうしろめたいことはない。そもそも映画はほとんどがヤラセ、つまり作り物である。では、なぜモンド映画というカテゴリーがあるのか、それはドキュメンタリーのような撮影で謳い文句をしながら、実はヤラセ、作り物を組み合わせているトンデモ映画がモンド映画である。
モンド映画のモンドは、イタリア語で「Mondo」。「世界」という意味もあるが、『世界残酷物語』の原題から来ている。原題は「Mondo Cane / 犬の世界」。世界から取っていることになるが、世界という意味ではなく、『世界残酷物語』から来ているということ。つまり、この映画から始まったのだが、邦題の『世界残酷物語』はなかなか素晴らしいネーミング。少なくとも『犬の世界』では内容が伝わらない。邦題にはおかしなものもあるが、原題を超えるものも多い。
モンドセレクションという、よく耳にするものの意味がわからない評価があるが、あちらのモンドはフランス語の「Monde」で「世界」「世間」「人々」という意味である。ベルギーの民間機関が決める技術水準とのこと。こっちも怪しいといえば妖しい。

やはりモンド映画を語る上で欠かせないのがグァルティエロ・ヤコペッティ。モンド映画というジャンルを確立したこともあるが、数々の映画に「ヤコペッティ」の名前が付くほどのヒットメーカーである。ただ、それが偉大なことかと云うと疑問符が付く方も多いだろう。当時はまだアフリカが未知の世界と言うこともあり、映画はアフリカを題材として次々に作られたものの、今見れば、差別的な映像も多く、とても配給などできない代物である。その一連のヤコペッティ作品に便乗したモンド映画は世界中でも作られた。日本映画でもモンド映画というジャンルはあるが、内容的には女性を中心とした夜の仕事などの実録物が多かった。モンド映画のもう一つのジャンルである、いわゆる「夜もの」だ。こちらも女性への偏見が多く、今では奇抜なカルト映画と捉えられている。『世界残酷物語シリーズ』と並行して作られたのが『世界女族物語』。タイトルからしていかがわしいが、見世物小屋のように怖いもの見たさの心情を誘っていた。この『世界残酷物語』で有名なのが、海に帰れなくなるウミガメの母親たちの映像。次々に息絶えるウミガメたちを、ただ傍観しているというスタンスが問題となったりもした。人間の女性に対しても、他人事なスタッフにそこまで求めるのは無理な話ではある。この方向感覚を失った動物の悲劇を原爆実験の影響に結び付けるのは、ちょっとモンド映画にしても行き過ぎではないだろうか。所詮、モンド映画なのだから、そんな主張はいらない。ただ、そのウミガメたちの映像に流れるのがテーマ曲でもあるリズ・オルトラーニによる「モア」。これが、なんとも美しい。当時のイタリア映画には美しいメロディを作る作曲家が多かったが、その中でも特筆すべき曲だ。映画の残酷さに相反したテーマ曲はヒットして、いまでもどこかで耳にしているのではないのだろうか。
『世界残酷物語』の影響により、いわゆる『残酷もの』が立て続けに作られる。同じように未開の地を舞台にして、日本でヒットしたのが『グレートハンティング』である。「地上最後の残酷」という名目で、ライオンによって人が食い殺されるシーンを売りとして、日本では盛大に宣伝された。その甲斐あってか、1976年の外国映画2位の配給となった。今考えれば信じられないが、日本の人たちは残酷性を映画に求めていたのだ。もちろんライオンに食い殺されるシーンは〝やらせ〟で、映画でも細切れの映像となっており、よくわからないものだった。個人的には、このシーンよりも人間狩りの方が印象は強かった。ただ、ライオンのシーンに釣られたことは否定しない。
映画がヒットしたことで『グレートハンティング2』『グレートハンティング’84』と続編が登場する。この映画を製作した一人であるマリオ・モッラがF1のドキュメンタリー映画『ポールポジション』(1978年)シリーズを発表する。そう『ポールポジション』は〝やらせ〟ではないが、残酷を売り物としたモンド映画とされている。『ポールポジション』はわざわざ新宿まで観に行ったのだが、モンド映画ジャンルとは、結構がっかりした。事故シーンが多く、それを売り物にしていたのだから、確かにモンド映画ではある。

その後はアフリカや野性モノよりも人間社会の残酷なものが作られるようになった。
『スナッフ/SNUFF(米:1975年)』『ジャンク 死と惨劇(米:1978年)』『食人族(伊:1981年)』等々。この中で『ジャンク』は劇場で鑑賞した。色々な世界の死刑シーンを流すのだが、売りは「電気椅子」だった。今考えれば、どこか滑稽だったのだが、当時は本当の映像だと信じて疑わなかった。実際の処刑はあんな感じなんだな、などと納得したが、やはり怖さはなかった。この『ジャンク』は日本資本で、アメリカで製作された作品。最初から日本市場がターゲットだった。このあたりから、ただ単に衝撃的シーンを集めた安上がりのモンド映画が増えてくる。今ならば「衝撃映像」の特集である。
モンド映画は今でも作られているのだが、日本で配給されることはないだろう。アフリカなどの未開の地への偏見はなくなり、衝撃映像もテレビやwebで観ることが可能だからだろう。このジャンルの映画が日本でヒットを続けたのだから、やはり不思議な時代だったのかもしれない。















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