かつての映画少年 在りし日の動物映画

路地裏の映画少年
大自然に生きる動物たち それだけの映画にお金を払った日々

 個人的に好みの動物映画とは、動物が主役の映画ではなく、あくまでも自然の中に生きる動物を追ったドキュメント作品のことだ。いまではBSなどで、4Kの高画質で鑑賞できるが、昔も「野生の王国」「驚異の世界」など民放で自然界のドキュメントは放映されていた。しかし、映画館でも数多くのネイチャーものが上映され、学生でありながらお金を払って、テレビでも観れるような作品を観に映画館へ足を運んだ。なぜなのだろうか。

 当時で一番印象に残っているのが『ビューティフル・ピープル/ゆかいな仲間』(1974)。おそらく同時上映を目的で映画館で鑑賞したのだが、その併映の作品がなんだったのか、まったく憶えていない。それでも印象に残っているのは、やはりこの作品が名作だったからだろう。なんと南アフリカの作品で、監督は後に『ブッシュマン』を撮影したジャミー・ユイスだったことは後で知った。テレビでも観れるネイチャーワールドを90分ほどスクリーンで鑑賞。当時のブラウン管テレビを考えると、そのスケールと映像美は段違いだった。それでも、エピソードで憶えているのは、みなさんが指摘するヒヒをはじめ、多くの野生の動物たちが酔っぱらうシーン。まあ、あれがこの映画のハイライトではある。いまだに、あのシーンだけは記憶に残っている。またテレビ版のナレーションが故渥美清だったのだが、まったく記憶になかったので、最近知って驚いた。

 この映画よりかなり前の作品になるが、原作がヒットした『野生のエルザ』が動物系ドキュメントものの先駆けだろう。なぜか原作本がブームとなり、当時の小学生の話題の中心となった。その後、映画がテレビで放映され、人気はますます過熱して、1974年にはテレビドラマが作られた。そのため、日本では『野生のエルザ』がムーブメントを起こし、小学生にも知ることとなる。ライオンと人間の絆に誰もの心が洗われたのだが、原作者のジョイ・アダムソンは1980年ナイロビの郊外で遺体となって発見される。最初はライオンに殺されたという噂がまことしやかに広まったが、実際は地元の青年に金銭目的で殺害されたことがわかり、ライオンたちの濡れ衣は晴れた。まったく根も葉もない話に誰もが食いついてしまった。

 同じように書籍から映画化となったのが『かもめのジョナサン』。これはドキュメントものと言うより、ちょっと自己啓発に近い作品。今となっては、映画化されたことを誰も覚えていないのでは。また『ベンジー』という雑種犬が主役の映画も日本ではヒットした。これは宣伝で使われたチャーリー・リッチが歌う「ベンジーのテーマ」の影響が大きかった。映画館で鑑賞したのだが、内容はほとんど覚えていないが、この曲だけは耳に残っている。

 そして満を持して登場したのが『キタキツネ物語』だ。こちらは1980年代に流行した動物映画の先駆けだった。その後の『物語』のつく映画はヒットするというパイオニアでもある。『子猫物語』『南極物語』『タスマニア物語』『ハチ公物語』など、どれも動物に関連した映画であることは、配給会社の意図的なものだろう。ただ、この中では『キタキツネ物語』はいい意味で異質だった。確かに過度な音楽挿入やナレーションなどの演出はあったものの、他の作品がドラマ仕立てなのに対して、自然を通した動物たちをフィルムに収めた見事なドキュメンタリー作品だった。泣けたなあ、という思い出。この『キタキツネ物語』はテレビ放映で視聴率44.7%を記録し、『千と千尋の神隠し』に抜かれるまでは、映画の視聴率ではトップだった。つまり今でも2位である。やがて2013年に公開35周年と銘打ってデジタル修復されたリニューアル版が上映されたが、こちらを観ることはできていない。

 ある意味、動物映画で記憶に残っているのが、先にも挙げた畑正憲(ムツゴロウ)初監督の『子猫物語』だ。ほとんど人間が出てこない作品ではあるが、動物愛護団体からの苦情などが相次ぎ、大きな話題となった。主役のチャトランが何匹もいて、半分ほど撮影中に死亡したり、逃亡した、という噂も流れたが、制作側の説明では「猫は全部で40匹。だた一匹も失ってはいない」というものだった。それもまた、抗議の対象となった。いまなら大炎上だろう。また、あまりにもフジテレビの意向が強く、ナレーションまで露木茂フジアナウンサーと言うやりたい放題。かなりの反感を買ったものの『子猫物語』は1986年邦画第1位となった。当時のフジテレビにとっては、まさにこの世の春だった。ただ、動物を主役に使うということを考えさせる、という意味ではエポックメイキングな作品だった。


 フランス・カナダ合作の1988年公開の『子熊物語』は、同じように子熊を追った映画だったが、こちらは傑作だった。監督はジャン=ジャック・アノー。映画好きな人なら知っている人も多いが、『薔薇の名前』『スターリングラード』『セブン・イヤーズ・イン・チベット』などの監督だが、動物映画も得意だった。2004年にトラの兄弟の映画『トゥー・ブラザーズ』を撮っているのだが、まだ未鑑賞なので、近いうちに鑑賞したい。ただ題名に『物語』のつく動物映画にうさん臭さが漂ってしまったことは『子猫物語』の負の遺産だろう。制作者の思惑で世間の評判は大きく異なってしまった。

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