フルメタル・ジャケット スタンリー・キューブリック(1987)
『ミッドナイト・エクスプレス』に続き、上映終了後も暫く席を立てなかった作品。エンドロールに流れたローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の「黒くぬれ!(Paint It, Black)」は強烈に突き刺さった。『プラトーン』の「イマジン」とは対照的だった。この映画鑑賞以来、ストーンズのベストは「黒くぬれ!」になった。ストーンズに関しては、1990年の初来日のライブを東京ドームで参戦。その健在ぶりを堪能できたが、やはり「黒くぬれ!」が個人的には一番の盛り上がりだった。
さて本作品だが、ご存知、巨匠「スタンリー・キューブリック」の異色作。とっ言っても、この監督は、ほとんどの作品が異色ではある。統一性が無いといえば無いのだが、その先進的なカメラワークにはいつも唸らせられる。『2001年宇宙の旅』をベストに挙げる人は多いのだが、残念ながらリアルタイムでロードショーを観ていないこと、スクリーンで鑑賞がないことが、自分にとってのベストとはならなかった。
この映画の最大の見どころは、やはり何と言ってもベトナム戦争に参戦するための訓練風景。一般の若者を戦場に送り出すための殺人マシンに憑依させる件(くだり)は、背筋が寒くなるような、いい意味での醜悪さだった。最後の悲劇も致し方ないように思えた。放送禁止用語で罵倒する教官が凄まじく、さながらドキュメントを観ているようだった。キューブリックの指示で、翻訳も戸田奈津子から原田眞人に変更されたのは有名な話だが、いまでは監督として名を馳せた原田眞人にとっては、字幕翻訳のデビュー作がこれとは、なかなか感慨深い登板だったのだろう。猥褻、下品を超越した翻訳なのだから。主役のマシュー・モディーンがいなければ、何を見せられているのか、と恐怖を感じるほどだった。また、この映画の価値を上げたのは教官役を「ロナルド・リー・アーメイ」にしたことだろう。元海兵隊で沖縄の普天間にも赴任したとのこと。あの迫力は、なかなか出せない。
キューブリックの作品にはこんな配役の妙がある。本作品の「ロナルド・リー・アーメイ」はもちろん、『シャイニング』の「ジャック・ニコルソン」は他の役者は考えられないし、『機械仕掛けのオレンジ』のマルコム・マクダウェルはあまりに強烈だったので、その後の俳優人生は華やかではなくなった。『アイズ ワイド シャット』に関しては、ちょっと悪乗りが過ぎて、それだけの映画になってしまった。俳優が目立たないようで、目立っているのは、やはり映画演出の重要なところでもある。
『フルメタルジャケット』のラストシーンはハッピーエンドではなく、それまでのストーリーを重ねた深い余韻があり、アメリカ兵が行進しながら、「ミッキーマウスマーチ」を唄う場面は、なんともアメリカらしくもあった。そして「黒くぬれ!」のエンドロール。あまりに唐突で、消化できない人が椅子から立てなかったのも仕方ない。この辺りはキューブリックの演出・編集に感服するしかない。














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