いつかの映画少年 極私的映画感  vol.6『ジョーズ』

路地裏の映画少年
ジョーズ スティーブン・スピルバーグ(1975)

 〝ジョーズが日本に上陸する〟

 遂に、あのアメリカを席巻した恐怖のサメ映画が日本にやってくる。

 若干29歳のスピルバーグの劇場映画 第二弾である。

 若干29歳 このころの映画は、やはり大御所や、それなりに年齢を重ねた監督の作品が多かったので、なおさら新鮮だった。盟友ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』も29歳の作品。さらにテレビ映画の『激突!』はスピルバーグ25歳の作品。アメリカでは若い力に、莫大な製作費を与えるのは日本映画界からは考えられなかった。その若さも加わり、当時流行っていたパニックスペクタクル映画の新しい流れを感じる映画が待ちきれなかった。まさしく映画少年の期待が、一つの映画に詰まっていたのです。

 パニックスペクタクル映画とは人間の極限状態での恐怖を視覚や聴覚、なかには触覚への迫力で、映像を駆使した作品群。『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』『大地震』などの災害や大惨事を扱った作品が代表的だが、『ジャガーノート』『サブウェイ・パニック』などの犯罪映画も視覚的な迫力があることからパニック映画に含まれていた。そして、有名な俳優が多数登場する作品が特徴だった。『大空港』が元祖パニック映画と言われているのも、この有名俳優による「グランド・ホテル形式」の災害・大惨事の異常事態に立ち向かう姿を描いたからだろう。つづくエアポートシリーズの『エアポート75』『エアポート77』は確かにパニックスペクタクル映画である。とにかく製作費が桁違いなので、興行成績が上位に入ることが必須というのが涙ぐましくもあった。日本でも、その波に乗り『新幹線大爆破』や『東京湾炎上』などが制作された。その到達点が『タワーリング・インフェルノ』であり、次の動物パニックものの先駆けが『ジョーズ』だった。

 動物パニック映画はナチュラルホラーとも呼ばれ、自然界が人間に逆襲するというのがテーマだった。有名なのはヒッチコックの『鳥』。テレビでの鑑賞だったが、これはヒッチコックの中でも好きな作品。『ジョーズ』に続いたのが、クマが人を襲う『グリズリー』。これも話題にはなったが、やはり恐怖はそれほどではなかった。海洋ものもシャチの『オルカ』やタコが人間を襲う『テンタクルズ』などがあったが、やはりサメには勝てなったようで、『ジョーズ』はシリーズが続いたし、サメの恐怖映画は毎年のように公開され、今でも制作されている。そんな動物パニック映画の中でも異色で、いまでも記憶から離れないのが『スクワーム』。当時の宣伝ではミミズが人を襲うとのことだったが、実際はゴカイの仲間で、スクリーンの画面を埋め尽くす生理的な気持ち悪さは鳥肌が立つほどだった。クライマックスでミミズ(ゴカイ?)のプールに役者が落ちるのだが、CGなどない時代では本当に大量のミミズの中で演技をしたらしい。この頃の役者魂はある意味凄かった。もう一つ異色なのが『吸血の群れ』。なんとカエルが人を襲うのだ。一体、どうやって、が正直な感想。予告のポスターではカエルの口から人間の手がはみ出ていたので、巨大カエルが人間を食べるのかと思ったが、実際はまったく違っていた。その方法は明記しないので、Blu-rayなど発売されているので、興味のある方はご覧ください。ヒントとして拍子抜けは否めないです。この作品も週刊少年漫画に特集が組まれたりしたので期待していたのだが、同時上映だった『人間解剖』という訳の分からない映画の方が印象に残った。人間を解剖するだけの話なのだが、セミドキュメンタリーのスペイン映画。モンド映画に近いのだが、意味不明な回想シーンはドラマでもあった。いまでも、あれは何だったのだろうか、と思うことがある。つまり印象には残っているということ。

こんなオブジェも映画ジョーズの影響だろう

 さて、この『ジョーズ』に関する記憶に戻ります。

 今ではあり得ないが、一日に3回続けてロードショーを鑑賞した。1回の上映で完全入替えするシネコンでは無理な話だが、当時はなぜか許されていた。3回目の鑑賞の時は、次に起きることがほとんど分かっていたのだが、それでも興奮したのは作品の持つポテンシャルだったのだろう。ただ、その当時は、映画の公開前になぜかマンガ(マガジンだったかな…)で全ストーリーを公開していた。読まなければ良いのだが、やはり読んでしまう。だから、当日は、あの3人の最後がどうなるか、はわかっていた。興行的には問題ありなのだが、当時は平気でネタバレをしていた。今のようにSNSもないので、一般の人ではなく、ちゃんとしたメディアが堂々とネタバレをしていた。『スターウォーズ 帝国の逆襲』も、あの一番の問題シーンを事前に販売していた解説本に写真入りで明示されていた。興味が半分に落ちたが、それでも多くの映画で公開前にネタバレを繰り返していた。そんな、ほぼストーリーを理解していた状況で観たのだから、やはり『スターウォーズ シリーズ』には深淵なストーリーよりも、娯楽大作であるための特殊技術の進歩を期待していた。しかし『ジョーズ』に関しては、そんな想いはなかった。まだ年少だったこともあるが、とにかく日本中で期待が膨らんでいたのだ。それは、やはりパニック映画の集大成であり、終焉だった。時代は大作の中心はSF映画となった。

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