ミッドナイト・エクスプレス アランパーカー(1978)
映画館でエンドロールが流れている間、いや劇場が明るくなっても暫く立ち上がることができなかった。そんな衝撃を最初に経験した作品だった。映画館でなければ、このような現象は起きなかっただろう。家でDVDを鑑賞しても、感動して涙腺が緩むことはあっても、立ち上がることができないような映画には出会ったことはない。映画館ならば、他にも『フルメタルジャケット』や『仕立て屋の恋』、前述した『カティンの森』などがあった。ただ『仕立て屋の恋』は違う意味で立てなかった。そう、あまりに救われないラストだったからだ。
本作の上映が終了したときに、館内がザワザワとした空気に満ちていた。あの雰囲気は映画館でないと味わえない。誰もが、このまま帰っていいのか、という何とも言い難い想いだったのだろう。
アラン・パーカーという監督は社会派監督として有名ではあるが、生粋のエンターテインメントの才能も持っている。どこか重くなりがちなテーマを、スリル感とドラマチックな映画に仕上げる作家である。オカルトめいた『エンゼルハート』のハードボイルド感、アメリカの人種差別を取り上げた『ミシシッピー・バーニング』のサスペンス感。どれも傑作ではあるが、その端緒となったのが、この作品だった。そして、この作品はとにかく重い。全編に漂う不穏な空気が最初から最後まで続く、気の滅入る作品だ。アラン・パーカーが最初にスクリーンに登場したのは、なんと日本の当時の若者が大好きな『小さな恋のメロディ』だった。まったく毛色の違う作品だが、このときは脚本担当だった。原作などないので、草案もしていたのだろう。作家としての実力は、この時に認められた。そう言えば、『小さな恋のメロディ』にも階級差の話があったような。そして初監督の『ダウンタウン物語』の次に発表したのが本作だった。ハリウッドの凄いところは、いきなり傑作を生みだす演出家を抜粋するシステムではないのだろうか。もちろん、頭角を現してはいたのだが、日本のように助監督を経験してからという無駄な慣習はない。
この作品の負の遺産ではないが、トルコという国がとてつもなく恐ろしい国と感じた人は多いだろう。もちろん麻薬に係わらなければ関係ないのだが、それでも独裁的な封建国家という印象ができたのは確かだ。今では中東のイスラム国の中では、かなり安全な国であることは日本人の誰もが知っているのだが、映画の印象とは恐ろしい。
ちなみに、この作品でオリバー・ストーンがアカデミー脚色賞を獲っている。


この映画で欠かせないのが、主役のブラッド・デイヴィスの迫真の演技だ。しかし、彼の代表作はこの『ミッドナイト・エクスプレス』だけと言っていい。ほかの映画も出演したものの、主役をすることはなかった。また、出演自体も減ってしまった。AIDS患者であり、オーバードーズで1991年に亡くなるまで、そのことを隠していたことが理由だろう。この作品からアラン・パーカーの名前は気になったものの、ブラッド・デイヴィスの名前は追わなかったので、その名前もすぐに忘れてしまった。彼が亡くなったことも、リアルタイムのニュースでは知らなかった。もっと多くの映画で主役を演じられたのだろうが、当時のハリウッドではやはり難しかったのだろう。









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